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インフルエンザ

はじめに:インフルエンザかな?と思ったら

冬場に突然の高熱や体の節々の痛みが出ると、「もしかしてインフルエンザ?」と不安に思われるかもしれません。
当院は、総合内科専門医である院長と女性医師である副院長が、患者様一人ひとりに寄り添った医療を提供することを理念としております。院内にはインフルエンザの迅速検査キットを常備しており、感染症専用の診察室も設けておりますので、安心してご来院ください。
この記事では、インフルエンザの症状や治療、予防について専門医の立場から分かりやすく解説します。

インフルエンザの主な症状と経過

インフルエンザは、普通の風邪と比べて症状が急激に、そして強く現れるのが特徴です。主な症状には以下のようなものがあります。

  • 高熱(38℃以上)
  • 鼻水
  • のどの痛み
  • 頭痛
  • 関節痛・筋肉痛
  • 全身倦怠感(強いだるさ)

特に小さなお子様では、嘔吐や下痢といった消化器症状が見られることもあります。
一般的に、症状は最初の2~3日がピークで、その後7~10日かけて徐々に改善していきます。ただし、咳は長引くことが多く、3~4週間続くことも珍しくありません。この経過を知っておくことで、過度な心配をせずに療養に専念できます。

インフルエンザウイルスの種類(型)

インフルエンザウイルスにはいくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。主にヒトの間で流行し、問題となるのはA型B型です。

1. A型インフルエンザ(Infl uenza A)

毎年流行する季節性インフルエンザの主な原因です。ウイルスの表面にあるタンパク質の組み合わせによって、さらに細かい「亜型」に分類されます。

  • 主な流行株:ヒトの間で流行するA型インフルエンザとしては、A(H1N1)pdm09A(H3N2)(通称:A香港型)などがあります。最近では、A(H3N2)型の中でも「サブクレードK(K亜系統)」と呼ばれる株が主な流行株となっています。ただし、流行する株は年々変化するため、毎年のワクチン株も更新されています。
  • 特徴:A型はヒトだけでなく、鳥や豚などの動物にも感染します。これにより遺伝子が混ざり合い、全く新しいウイルス(新型インフルエンザ)が出現して世界的な大流行(パンデミック)を引き起こす可能性があります。また、頻繁に変異を起こすため、毎年のワクチン更新が必要です。

2. B型インフルエンザ(Infl uenza B)

A型と同様に季節性の流行を起こしますが、A型ほどの爆発的な大流行にはなりにくい傾向があります。B型は以下の2つの「系統」に分類されます。

  • ビクトリア系統 (B/Victoria)
  • 山形系統 (B/Yamagata)

【最新の動向:B/山形系統について】

近年、B型インフルエンザに大きな変化が起きています。世界的に2020年春以降、B/山形系統はほとんど検出されておらず、事実上消滅した可能性が指摘されています。これに伴い、今後はワクチンも従来の4価(A型2種+B型2種)から、山形系統を除いた3価への移行が進められています。

3. その他の型(C型・D型)

  • C型:呼吸器疾患の原因となりますが、A型やB型に比べて一般的ではなく、流行の規模も小さいとされています
  • D型:主に牛などの動物に感染するウイルスで、ヒトへの感染は稀です。

感染経路

インフルエンザの感染力は非常に強く、主な感染経路は以下の2つです。

  • 飛沫感染:感染者の咳やくしゃみなどで飛び散ったウイルスを吸い込むことで感染します。
  • 接触感染:ウイルスが付着したドアノブや手すりなどに触れた手で、口や鼻、目などを触ることで感染します。

このため、学校や職場などで集団感染(アウトブレイク)を引き起こしやすいという特徴があります。

当院での診断方法

インフルエンザが疑われる場合、当院では迅速抗原検査を行います。これは、鼻の奥を細い綿棒でぬぐって検体を採取し、約10分で結果が判明する検査です。

専門医による診察所見:咽頭濾胞(インフルエンザ濾胞)

当院では、迅速検査に加えて、専門医による丁寧な診察を重視しています。その中で特に注目しているのが「咽頭濾胞(いんとうろほう)」という所見です。
咽頭濾胞とは、のどの奥の壁(咽頭後壁)に見られる、リンパ組織が腫れて丸く盛り上がった状態のことです。インフルエンザ患者さんに見られる典型的な濾胞は、その見た目から「イクラ」に例えられ、以下のような特徴があります。

  • 形状:丸く半球状で、境界が明瞭。それぞれが独立している(米粒様・涙滴様)
  • 色・質感:赤紫色で、表面は緊満して光沢があり、半透明
  • 出現時期:発症の極めて早期から出現する

【診断における重要性】

インフルエンザ流行期において、この濾胞は非常に高い診断精度を持つことが報告されています。発熱から数時間後には出現することもあり、迅速検査が陽性になるよりも早く確認できる場合があります。
このため、流行期にこの濾胞が確認できれば、迅速検査を待たずにインフルエンザと診断し、早期治療を開始できる場合があります。これが専門医による診察の強みと言えます。

「隠れインフルエンザ」にご注意ください

発症して間もない時期(特に12時間以内)は、ウイルス量が少なく検査で陽性反応が出ないことがあります。これを俗に「隠れインフルエンザ」と呼ぶこともあります。
検査結果はあくまで一つの判断材料です。専門医による診断は、患者様個々の症状、周囲の流行状況、咽頭所見(濾胞の有無)、そして丁寧な診察を総合的に判断して行われます。検査が陰性であっても感染を否定するものではありません。このような時こそ、我々専門医の臨床経験に基づいた判断が、迅速で適切な治療開始の鍵となるのです。

インフルエンザの治療法

インフルエンザの治療は、ウイルスの増殖を抑える「抗インフルエンザ薬(原因療法)」と、つらい症状を和らげる「対症療法」が中心となります。
※インフルエンザに抗菌薬(抗生物質)は効きません
インフルエンザはウイルスによる感染症であり、細菌を標的とする抗菌薬は効果がありません。当院では「抗菌薬の適正使用」を徹底し、必要な治療のみを提供します。

1. 抗インフルエンザ薬(原因療法)

薬剤名(商品名) 一般名 特徴と服用方法
タミフル オセルタミビル 経口薬(飲み薬)
最も標準的なお薬です。1日2回、5日間服用します。ジェネリックもあり経済的です。
リレンザ ザナミビル 吸入薬
1日2回、5日間吸入します。気管支喘息の方は発作のリスクがあるため慎重に使用します。
イナビル ラニナミビル 吸入薬
1回の吸入で治療が完結するため、飲み忘れの心配がありません。
ラピアクタ ペラミビル 点滴薬
1回の点滴で治療が終わります。内服が困難な方や重症例に適しています。
ゾフルーザ バロキサビル 経口薬(飲み薬)
1回の服用で治療が完結する新しいタイプのお薬です。ただし、ウイルスが耐性を持ちやすいため、小児や免疫不全の方への使用は慎重に判断します。

※お薬の選択は、患者様の年齢、基礎疾患、症状などを考慮して医師が決定します。必ず指示通りに服用してください。

2. 症状を和らげる対症療法

  • 解熱剤:高熱によるつらさを和らげます。
  • 鎮咳薬・去痰薬:つらい咳を鎮め、痰を出しやすくします。

【解熱剤の注意点】

つらい熱や痛みを和らげるために強い痛み止めを使いたくなるかもしれませんが、
アスピリン(サリチル酸系)や一部のNSAIDs(ロキソプロフェン等)は、インフルエンザ脳症などのリスクを高める恐れがあるため、特に小児では使用を避けるべきです。
当院では、安全性の高いアセトアミノフェン(カロナールなど)を第一選択として処方しています。

3. 漢方薬による治療

症状や体質に合わせて漢方薬を併用することもあります。

  • 麻黄湯(マオウトウ):高熱、節々の痛み、寒気が強い初期段階(実証タイプ)に有効です。抗インフルエンザ薬と同程度の解熱効果があるという報告もあります。
  • 葛根湯(カッコントウ):初期の寒気や首のこわばりがある場合に使用します。
  • 補中益気湯(ホチュウエッキトウ):熱が下がった後の長引く倦怠感(だるさ)の回復を助けます。

4. タミフルの予防内服について

インフルエンザの予防において最も重要なのはワクチン接種であり、抗インフルエンザ薬の予防内服はワクチンの代わりになるものではありません。ただし、特定の状況下では、インフルエンザ患者さんと接触した後の短期予防内服(7~10日間)が有効な手段となる場合があります。

【予防内服の対象】

以下のような状況で検討します。

  • ハイリスク患者:家庭内や施設内でインフルエンザ患者さんと接触があり、特にワクチン未接種の場合
  • 投与方法:成人および13歳以上の小児には、オセルタミビル75mg/日を7~10日間服用
  • 開始時期:患者さんとの接触後、48時間以内に開始する必要があります

※1歳未満の小児に対する安全性および有効性は確立していません。

【ハイリスク患者とは】

  • 高齢者(65歳以上)
  • 慢性呼吸器疾患(喘息、COPD等)または慢性心疾患の患者さん
  • 代謝性疾患(糖尿病など)の患者さん
  • 腎機能障害のある患者さん
  • 免疫抑制状態の患者さん

【重要な注意事項】

  • 保険適用:日本では予防目的での処方は健康保険の対象外となり、全額自己負担(自費診療)となります
  • 効果の限界:発症リスクを低減する効果が認められていますが、100%予防できるわけではありません
  • 適応の判断:すべてのケースで推奨されるわけではありません。患者様の状況を総合的に評価して判断します

予防内服をご希望の方は、患者様の状況(基礎疾患の有無、ワクチン接種歴、インフルエンザ患者との接触状況など)を総合的に判断した上で、適切かどうかを医学的に評価いたします。まずは当院にご相談ください。
ただし、予防の基本はワクチン接種と日常の感染対策であることを忘れないようにしましょう。

注意が必要な方(重症化リスクの高い方)

インフルエンザは、一部の方で肺炎などの合併症を引き起こし、重症化するリスクがあります。特に以下の方は注意が必要です。

糖尿病などの基礎疾患をお持ちの方

糖尿病、心臓病、呼吸器疾患などの持病がある方は重症化リスクが高まります。
当院の院長は糖尿病専門医でもあります。
インフルエンザの治療と並行して、HbA1c(血糖コントロール指標)の即日測定などを行い、基礎疾患を含めた全身管理を行います。

高齢者の方

高齢者の方は、一度感染すると重症化しやすく、回復にも時間がかかります。また、腎機能が低下していることが多いため、市販の解熱鎮痛薬が腎臓に負担をかけることもあります。医師による適切な薬剤選択が不可欠です。

妊婦・授乳中の方

妊娠中は重症化しやすいため、抗インフルエンザ薬による治療が推奨されます(タミフルなどは妊娠中でも安全に使用できると考えられています)。当院には女性医師(副院長)が在籍しておりますので、妊娠・授乳中の治療に関する不安や疑問など、お気軽にご相談ください。

予防法

  1. ワクチン接種:流行前の接種が最も有効です。効果が出るまで約2週間かかるため、12月中旬頃までの接種が理想的です。
  2. 手洗い・うがい:外出後や食事前には必ず行いましょう。
  3. 適切な湿度:空気が乾燥すると喉の防御機能が低下します。加湿器などで湿度を保ちましょう。
  4. 休養と栄養:十分な睡眠とバランスの良い食事で、免疫力を高めましょう。

インフルエンザに関するよくあるご質問 (FAQ)

Q1. インフルエンザにかかったら、どのくらいの期間外出を控えればよいですか?

A1. 一般的に、インフルエンザ発症前日から発症後3~7日間は鼻やのどからウイルスを排出するといわれています。そのため、ウイルスを排出している間は、外出を控える必要があります。
排出されるウイルス量は解熱とともに減少しますが、解熱後もウイルスを排出するといわれています。排出期間の長さには個人差がありますが、咳やくしゃみ等の症状が続いている場合には、不織布製マスクを着用する等、周りの方へうつさないよう配慮しましょう。
現在、学校保健安全法では「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまで」をインフルエンザによる出席停止期間としています(ただし、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めたときは、この限りではありません)。
発症日を0日目として数えます。

【出席停止期間の考え方(表で確認)】

以下の表は、発症日と解熱日によって出席停止期間がどのように変わるかを示したものです。

解熱した日 発症日からの経過日数
0日目
(発症日)
1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目
発症後1日目に解熱した場合 × ×
解熱0日
×
解熱1日
×
解熱2日
× ×
発症後2日目に解熱した場合 × × ×
解熱0日
×
解熱1日
×
解熱2日
×
発症後3日目に解熱した場合 × × × ×
解熱0日
×
解熱1日
×
解熱2日
発症後4日目に解熱した場合 × × × × ×
解熱0日
×
解熱1日
×
解熱2日

×:出席停止
○:登校可能

※幼児(幼稚園・保育園児)の場合は、解熱後3日を経過するまでが出席停止期間となります。
※この表は学童(小学生以上)の基準を示しています。

【参考:対象者別の目安】

学校・幼稚園等(児童・生徒):
上記の学校保健安全法の基準が適用されます。

一般社会・職場(成人):
法律による明確な就業制限基準はありませんが、各職場の規定に従う必要があります。職場復帰の目安としては、上記の学校保健安全法の基準を参考にされることをお勧めします。

Q2. インフルエンザの検査は痛いですか?

A2. 鼻の奥に細い綿棒を入れるため、少しツーンとした痛みを感じることがありますが、検査自体は一瞬ですぐに終わります。

Q3. ワクチンを打ったのにインフルエンザにかかることはありますか?

A3. 残念ながら、ワクチンの予防効果は100%ではありません。しかし、万が一感染しても、発症を抑えたり、症状を軽くしたり、重症化を防ぐ効果が期待できます。

Q4. 家族がインフルエンザにかかりました。どうすればいいですか?

A4. 可能であれば部屋を分け、看病する方を限定してください。部屋の換気をこまめに行い、マスクの着用や手洗いを徹底しましょう。ハイリスクの方(高齢者、基礎疾患のある方など)で、ワクチン未接種の場合は、予防内服についても医師にご相談ください。

院長からのメッセージ

インフルエンザは誰でもかかる可能性のある身近な病気ですが、特に高齢の方や持病をお持ちの方にとっては重症化する危険性をはらんでいます。
当院では、予防のためのワクチン接種から、迅速な診断と適切な治療、そして糖尿病専門医としての基礎疾患管理まで、一貫した医療を提供できる体制を整えています。総合内科専門医の院長と、女性医師の副院長が連携し、患者様一人ひとりの状況に合わせた最適なケアを心がけています。
当院では、薬を処方するだけでなく、患者様がご自身の病状の経過を理解し、安心して療養できるよう『説明を処方する』ことも大切な治療の一環だと考えています。
体調に不安を感じたら、いつでもお気軽にご来院ください。

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