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橋本病

橋本病(慢性甲状腺炎)とは?
—症状・診断・治療をわかりやすく解説

更新日:2025年 監修:内分泌・糖尿病内科

「健康診断で甲状腺の異常を指摘された」「なんとなく疲れやすい、寒がりになった気がする」——そのような症状の背景に、橋本病が潜んでいることがあります。橋本病は日本で非常に頻度の高い疾患のひとつですが、多くの方はその名前を聞いてもどんな病気かをご存じないかもしれません。この記事では、橋本病の基礎知識から症状・検査・治療・日常生活のポイントまでをわかりやすくお伝えします。

橋本病とはどんな病気?

橋本病は、本来は体を守るはずの免疫システムが、自分自身の甲状腺を誤って攻撃してしまう自己免疫疾患です。甲状腺に慢性的な炎症が起き、組織が少しずつ壊れていきます。正式名称は「慢性甲状腺炎」といい、1912年に日本の医師・橋本策博士がこの病態を世界で初めて報告したことから、その名がつけられました。

女性に多く(男女比は約1:5〜1:24)、30〜40歳代での診断が多い疾患です。甲状腺機能が正常なものも含めると、全人口の約10%に及ぶとされています。

橋本病の症状

橋本病の患者さんの70〜80%は甲状腺機能が正常に保たれており、ほとんど無症状です。首の前にある甲状腺がやや腫れることで気づくケースも少なくありません。
しかし、病気が進行して甲状腺機能低下症になると、体の代謝が落ちることで以下のような全身症状が現れます。

  • 強い疲労感・無気力
  • 寒がり(冷え性)
  • 体重増加・むくみ
  • 便秘
  • 皮膚の乾燥・髪の毛の抜け毛
  • 集中力・記憶力の低下
  • 声の低音化・動作の緩慢

これらは生活習慣や加齢のせいだと見過ごされがちですが、甲状腺の機能低下が原因である場合があります。思い当たる症状がある方は、一度検査を受けることをお勧めします。

診断—どんな検査をするの?

橋本病の診断は、以下の検査を組み合わせて行います。

検査内容 詳細
触診・視診 甲状腺の腫れの確認
血液検査 甲状腺自己抗体(抗TPO抗体・抗サイログロブリン抗体)やTSH・甲状腺ホルモン値を測定
超音波(エコー)検査 甲状腺の大きさや内部の状態を画像で確認

びまん性の甲状腺腫大があり、かつ自己抗体が陽性であれば橋本病と診断されます。

治療—経過観察か、薬か

橋本病の治療方針は、甲状腺の機能によって異なります。

甲状腺機能が正常な場合

原則として治療は不要です。半年〜1年に1回程度の定期的な血液検査と経過観察を続けます。

甲状腺機能低下症がある場合

不足している甲状腺ホルモンを補う「ホルモン補充療法」として、レボチロキシン(チラーヂンS)という飲み薬を使用します。少量から始め、血液検査の結果を見ながら適切な量に調整します。薬を適切に内服していれば副作用はほとんどなく、健康な方と変わらない生活を送ることができます。

【妊娠中・妊娠希望の方へ】

妊娠中・妊娠を希望される方は、機能が正常に見えても治療が必要となる場合があります。妊娠前からTSH値を適切に管理することが母子の健康につながります。

長期的な見通し

橋本病は自己免疫疾患であるため、現時点では免疫の異常そのものを根本的に治す方法はありません。しかし、甲状腺ホルモンを適切に補充していれば、健康な方と変わらない日常生活を送ることが可能です。年単位でゆっくりと経過するため、定期的な通院と血液検査が重要です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 橋本病と診断されたら、ずっと薬を飲み続けなければなりませんか?

甲状腺機能が正常に保たれている間は薬は不要です。甲状腺機能低下症が永続的に続く場合は生涯の服薬が必要になることがありますが、一時的な機能低下や原因が特定できる場合は薬をやめられることもあります。担当医とご相談ください。

Q2. 橋本病はがんになりやすいですか?

橋本病を背景に甲状腺悪性リンパ腫が発生しやすくなることが知られています。甲状腺が急激に腫れる、声がかすれる、息苦しいといった症状が現れた場合は、速やかに専門医を受診してください。

Q3. 仕事や運動は普通にできますか?

甲状腺機能が正常に保たれていれば、健康な方と変わらない日常生活・仕事・運動が可能です。機能低下症の症状が強い時期は無理をせず、治療で機能が回復するのを待つことが大切です。

Q4. 食事で気をつけることはありますか?昆布は控えるべきですか?

ヨウ素(昆布・だし昆布・ヨウ素含有うがい薬など)の過剰摂取は、甲状腺機能低下症を誘発・悪化させる場合があります。大量の昆布や昆布だしの連用は避けることが望ましいですが、わかめやのりを少量食べる程度は問題ありません。極端な制限は不要です。

Q5. 橋本病があっても妊娠・出産はできますか?

甲状腺機能を適切に管理すれば、妊娠・出産は可能です。ただし妊娠中はホルモンの必要量が増加するため、妊娠前からTSH値を2.5 µU/mL以下にコントロールしておくことが推奨されます。妊娠が判明した際は速やかに医師にご相談ください。

Q6. 薬(チラーヂン)を自己判断でやめてもいいですか?

自己判断での中止は危険です。薬を急にやめると再び機能低下状態に戻り、動脈硬化や心不全などのリスクが高まる可能性があります。減量・中止の判断は必ず医師と相談のうえで行ってください。

Q7. 薬の効果はいつごろ出ますか?

チラーヂンは少量から開始し、血液検査を見ながら徐々に調整します。TSH値に効果が反映されるまでおよそ4〜6週間かかります。症状の改善には数週間〜数ヶ月を要することもありますが、焦らず定期的に受診を続けることが大切です。

Q8. 症状がない場合も受診し続けた方がいいですか?

はい、年に1〜2回の定期受診と血液検査をお勧めします。自覚症状がないまま甲状腺機能低下症に移行することがあるためです。特に自己抗体値が高い方や甲状腺が硬く腫れている方は、こまめな経過観察が重要です。

Q9. 橋本病は遺伝しますか?家族も検査を受けた方がよいですか?

橋本病の発症には遺伝的な要因が強く関係しており、家族内で発症しやすい傾向があります。ご家族(特に女性)に橋本病の方がいる場合、妊娠・出産のタイミングや体調不良を感じた際に、甲状腺機能の検査を受けることをお勧めします。

※この記事は医療情報の提供を目的としており、特定の治療法を推奨するものではありません。診断・治療については必ず医師にご相談ください。

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