甲状腺炎
甲状腺炎とは?
—種類・症状・治療をわかりやすく解説
更新日:2025年 監修:内分泌・糖尿病内科
「首が急に痛くなった」「出産後に動悸が続く」——こうした症状の背景に、甲状腺の炎症(甲状腺炎)が隠れていることがあります。甲状腺炎にはいくつかの種類があり、それぞれ原因・経過・治療が異なります。多くのタイプは数ヶ月で自然に回復しますが、まれに永続的な治療が必要になることもあります。
甲状腺炎の種類
甲状腺炎は大きく4つに分けられます。患者さんに多いのは「亜急性甲状腺炎」と「無痛性甲状腺炎(産後甲状腺炎)」の2つです。
| 種類 | 主な症状 | 経過 | 治療 |
|---|---|---|---|
| 亜急性甲状腺炎 | 首の強い痛み・発熱・動悸 | 数ヶ月で自然治癒 | 鎮痛薬・ステロイド |
| 無痛性甲状腺炎 | 動悸・疲れ(痛みなし) | 数ヶ月で自然回復 | 経過観察・対症療法 |
| 産後甲状腺炎 | 動悸または強い疲れ | 数ヶ月で自然回復 | 経過観察・対症療法 |
| 急性化膿性甲状腺炎 | 首の激痛・発赤・高熱 | 抗菌薬・手術が必要 | 緊急治療が必要 |
| バセドウ病との違い
甲状腺炎でも動悸や体重減少など、バセドウ病に似た症状が一時的に出ることがあります。違いは「甲状腺自身がホルモンを作りすぎる(バセドウ病)」のか、「炎症で壊れた組織からホルモンが漏れ出している(甲状腺炎)」のかという点です。治療法がまったく異なるため、正確な診断が重要です。 |
亜急性甲状腺炎
どんな病気?
風邪(ウイルス感染)の後、数週間を経て発症することが多い甲状腺の炎症です。中年女性に多く見られます。
主な症状
- のどぼとけの下(甲状腺)の強い痛み・腫れ
- 38〜39℃の発熱
- 動悸・発汗など(炎症でホルモンが一時的に漏れ出すため)
- 痛みが右から左(または左から右)へ移動することがある
経過と治療
多くは2〜4ヶ月で自然に治癒します。痛みが軽ければ市販の鎮痛薬で様子をみることもありますが、痛みが強い場合はステロイド薬(プレドニゾロン)が劇的に効きます。ただしステロイドは急にやめると再燃するため、数ヶ月かけてゆっくり減量します。
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注意 約5〜15%の方では、炎症のダメージにより甲状腺機能が回復しきらず、永続的な甲状腺機能低下症に移行することがあります。治癒後も定期的な血液検査が必要です。 |
無痛性甲状腺炎・産後甲状腺炎
どんな病気?
痛みを伴わずに甲状腺が一時的に壊れ、蓄えられていたホルモンが漏れ出す病気です。橋本病などの自己免疫疾患を持つ方に起こりやすく、出産後2〜6ヶ月頃に発症する場合は特に「産後甲状腺炎」と呼ばれます。
主な症状と経過
動悸・多汗などの症状が1〜2ヶ月続いた後、一時的に疲れやむくみ(機能低下の症状)が出て、その後数ヶ月で自然に回復するのが典型的な経過です。
治療
原則として経過観察のみです。動悸が強い場合は症状を和らげる薬(β遮断薬)を一時的に使用します。バセドウ病の治療薬(抗甲状腺薬)は使用できません。約10〜20%の方では機能低下が永続するため、回復後も定期的な血液検査が必要です。
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産後のお母さんへ 出産後の動悸や強い疲れを「育児疲れ」と思っていたら、産後甲状腺炎だったというケースは少なくありません。気になる症状があれば、一度甲状腺の血液検査を受けることをお勧めします。次の妊娠時にも繰り返すことがあるため、次回の妊娠前にも確認が必要です。 |
急性化膿性甲状腺炎(参考)
細菌が甲状腺に感染して化膿する稀な病気です。首の激しい痛み・発赤・高熱が現れ、緊急の治療(抗菌薬・外科的処置)が必要です。小児や若年者の左側に多く見られます。疑われる場合は速やかに総合病院の専門医を受診してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 首が痛くて熱があります。甲状腺炎の可能性はありますか?
風邪の数週間後に、のどぼとけの下が腫れて強く痛む場合は亜急性甲状腺炎の可能性があります。疼痛が強い場合や息苦しいなどの症状がある場合には、咽頭や声帯周囲の致死的疾患を除外するために、まずは耳鼻咽喉科で評価を行ってください。その際、大きな問題がなければ、甲状腺疾患の有無の評価目的に内科の受診を推奨します。
Q2. 亜急性甲状腺炎は必ずステロイドを飲まないといけませんか?
必ずしもステロイドは必要ありません。痛みが軽ければ一般的な鎮痛薬(NSAIDs)で様子をみることができます。ただし痛みや発熱が強く日常生活に支障がある場合は、ステロイド薬が劇的に効きます。医師と相談して決めましょう。
Q3. 亜急性甲状腺炎は完全に治りますか?
ほとんどの場合、2〜4ヶ月で完全に治癒します。ただし約5〜15%の方では甲状腺機能が完全に回復せず、永続的な機能低下症に移行することがあります。治癒後も定期的な血液検査を続けることが大切です。
Q4. 出産後に動悸や疲れが続いています。産後甲状腺炎の可能性はありますか?
十分に可能性があります。出産後2〜6ヶ月頃に動悸・息切れ・強い疲れが続く場合は、産後甲状腺炎(無痛性甲状腺炎)を起こしている可能性があります。育児疲れと混同されやすいので、一度血液検査を受けることをお勧めします。
Q5. 無痛性甲状腺炎と言われましたが、治療しなくていいですか?
はい、基本的には経過観察で自然に回復します。バセドウ病の治療薬(抗甲状腺薬)は使用できませんのでご注意ください。動悸がつらい場合は症状を和らげる薬を一時的に使うことがあります。
Q6. 産後甲状腺炎になりました。次の妊娠への影響はありますか?
次の妊娠・出産後にも繰り返して発症する可能性があります。また、妊娠中に甲状腺機能が低下すると母子への影響が出ることがあるため、次の妊娠を希望する際は早めに甲状腺の血液検査を受けてください。
Q7. 甲状腺炎の治療中、仕事や運動はできますか?
痛みや発熱が強い時期、または動悸・息切れが強い時期は安静が必要です。症状が落ち着いてホルモン値が正常に戻れば、通常通り仕事も運動も可能です。
Q8. 甲状腺炎は何科を受診すればよいですか?
内科または内分泌内科(甲状腺専門医)を受診するのが最適です。首の痛みから耳鼻咽喉科を受診し、そこで甲状腺炎が発見されることもよくあります。当院(内分泌・糖尿病内科)でもご相談いただけます。
※この記事は医療情報の提供を目的としており、特定の治療法を推奨するものではありません。診断・治療については必ず医師にご相談ください。
