甲状腺腫瘍
甲状腺にしこりが見つかったら?
—甲状腺腫瘍の種類・検査・治療をわかりやすく解説
更新日:2025年 監修:内分泌・糖尿病内科
健康診断や人間ドックで「甲状腺にしこりがある」と言われると、多くの方が「がんかもしれない」と不安になります。しかし、甲状腺のしこりの95%以上は良性です。この記事では、甲状腺腫瘍の基本的な知識を患者さん向けにわかりやすくお伝えします。
甲状腺の「しこり」とは?
甲状腺の一部が腫れてこぶ状になったものを「結節(しこり)」と呼びます。超音波検査を行うと、女性の約4人に1人、男性の約8人に1人という高い頻度で発見されます。ほとんどは自覚症状がなく、健康診断や人間ドックで初めて気づくことが多い状態です。
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ポイント しこりが見つかっても、慌てる必要はありません。95%以上は良性であり、超音波検査や必要に応じた細胞の検査(細胞診)で、ほとんどの場合は良性と確認できます。 |
甲状腺腫瘍の種類
良性のしこり
甲状腺のしこりの大部分は良性です。代表的なものとして、甲状腺組織が過形成した「腺腫様結節」、液体が溜まった「嚢胞(のうほう)」、被膜に包まれた「濾胞腺腫」などがあります。基本的には治療不要で、定期的な超音波検査で経過をみます。
悪性のしこり(甲状腺がん)
甲状腺がんにはいくつかの種類があります。頻度の高い順に以下のとおりです。
| 種類 | 頻度 | 特徴・予後 |
|---|---|---|
| 乳頭がん | 約90% | 最も多い。進行がゆっくりで予後が極めて良好(10年生存率95%以上) |
| 濾胞がん | 約5〜10% | 肺や骨に転移しやすいタイプも。早期発見が大切 |
| 髄様がん | 約1〜2% | 約1/3は遺伝性。家族の検査も重要 |
| 未分化がん | 約1〜2% | 進行が非常に早く予後不良。早急な対応が必要 |
| 悪性リンパ腫 | 約1〜5% | 橋本病を背景に発生。放射線・化学療法がよく効く |
どのように発見されるの?
甲状腺のがん(特に乳頭がん・濾胞がん)は、しこり以外に自覚症状がほとんどありません。多くは以下のような経緯で偶然発見されます。
- 健康診断・人間ドックの頸部超音波検査
- 頸動脈エコーやPET検査での偶然発見
- 自分で首のしこりに気づいて受診
以下のような症状がある場合は、早めの受診をお勧めします。
- しこりが急に大きくなった
- しこりが硬くて動かない
- 声がかすれてきた
- 首のリンパ節が腫れている
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受診の目安 放射線を頸部に当てたことがある方(過去の治療など)や、ご家族に甲状腺がんの方がいる場合は、症状がなくても一度専門医への相談をお勧めします。 |
診断の流れ
甲状腺腫瘍の診断は、主に以下の3つの検査で進めます。
① 超音波(エコー)検査
しこりの形・大きさ・内部の状態を確認します。痛みがなく短時間で行える検査です。しこりの形がいびつ、境界が不明瞭、細かい石灰化があるといった所見があると、悪性の可能性が高いと判断されます。
② 穿刺吸引細胞診(針で細胞を採取する検査)
超音波で悪性が疑われる場合に行います。細い針をしこりに刺して細胞を採取し、顕微鏡で良性・悪性を診断する最も確実な検査です。麻酔不要で、痛みは採血とほぼ同程度です。外来で短時間で終わります。
③ 血液検査
甲状腺の機能(ホルモン値)を確認するとともに、腫瘍マーカー(サイログロブリンなど)を測定します。
治療の方法
良性の場合
基本的には治療不要です。半年〜1年ごとに超音波検査で経過をみます。しこりが大きくなって周囲を圧迫する症状が出た場合には、手術が検討されます。
悪性(がん)の場合
がんの種類や進行度によって治療法が異なります。
- 乳頭がん・濾胞がん:基本は手術(甲状腺の切除)。再発リスクが高い場合は術後に放射性ヨウ素治療を追加することがあります。
- 髄様がん:手術が唯一の根治治療です。
- 未分化がん:手術・放射線・薬物療法を組み合わせた集学的治療を行います。
- 悪性リンパ腫:放射線療法や化学療法がよく効きます。
| 1cm以下の微小乳頭がんについて
1cm以下でリンパ節転移や周囲への広がりがない「超低リスク」の乳頭がんは、すぐに手術をせず定期的な超音波検査で経過をみる「積極的経過観察」が選択できます。しこりが大きくなった段階で手術しても手遅れにはならないことがわかっています。 |
手術後の生活と経過観察
甲状腺を全て切除した場合は、甲状腺ホルモン薬(1日1回の飲み薬)を生涯服用する必要があります。ただし、薬で適切にホルモン値を管理すれば、健康な方と変わらない日常生活を送れます。
術後は再発・転移の早期発見のため、定期的な超音波検査と血液検査(腫瘍マーカー)を続けることが大切です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 甲状腺にしこりが見つかりました。がんの可能性はどのくらいありますか?
甲状腺のしこりの95%以上は良性です。しこりが見つかっても、がんである可能性は低く、過度に心配する必要はありません。ただし、超音波検査や必要に応じた細胞診で確認することが大切です。
Q2. 甲状腺がんと診断されました。命に関わりますか?
甲状腺がんの約90%を占める「乳頭がん」は進行がゆっくりで、10年生存率は95%以上と非常に良好です。適切な治療を受ければ、多くの場合、命に関わることはありません。ただし種類によって異なるため、まずは担当医に詳しく確認してください。
Q3. 甲状腺がんは「おとなしいがん」と聞きましたが、本当ですか?
最も多い「乳頭がん」はおとなしいがんですが、すべての甲状腺がんがそうではありません。進行の早いタイプもあるため、どの種類のがんかを正確に診断することが重要です。
Q4. 細胞を採取する検査(細胞診)は痛いですか?
採血と同じくらいの細い針を使うため、痛みは採血とほぼ同程度です。麻酔は不要で、外来で短時間で終わります。超音波画像を見ながら行うため、安全に実施できます。
Q5. 細胞診の結果が「悪性の疑い」でした。どうすればよいですか?
乳頭がんなどの可能性があるため、基本的には手術による切除が検討されます。しこりの大きさや状態に応じて、専門医と相談しながら最適な方法を決めていきます。
Q6. 経過観察と言われましたが、本当に手術しなくていいのですか?
良性のしこりや、1cm以下でおとなしいタイプの乳頭がんであれば、すぐに手術をせず超音波検査で定期的に経過をみる方法があります。しこりが大きくなった段階で手術しても手遅れにはならないことがわかっています。定期受診を欠かさないことが大切です。
Q7. 手術で甲状腺を切除したら、日常生活はどうなりますか?
甲状腺を全て切除した場合は、1日1回の甲状腺ホルモン薬を生涯服用する必要があります。ただし、薬でホルモン値を正常に保てば、健康な方と全く同じように生活・仕事・運動ができます。
Q8. 手術後に放射性ヨウ素治療が必要と言われました。どのような治療ですか?
放射性ヨウ素のカプセルを飲む治療(アイソトープ治療)です。手術後に残った甲状腺組織を取り除いて再発を予防したり、肺や骨に転移したがん細胞を内側から治療したりするために行われます。
Q9. 甲状腺がんの手術後、再発することはありますか?
手術後も再発・転移することがあるため、術後の定期検査(超音波検査・血液検査)が欠かせません。乳頭がんは首のリンパ節に、濾胞がんは肺や骨に再発しやすい傾向があります。
Q10. 甲状腺がんの治療後、妊娠・出産はできますか?
可能です。ただし、放射性ヨウ素治療を受けた場合は治療後6ヶ月〜1年間の避妊が必要です。また、甲状腺ホルモン薬を服用中の方は、妊娠がわかったら早めに主治医に相談し、薬の量を調整してもらってください。
Q11. 甲状腺がんを予防できますか?
確実な予防法は確立されていません。バランスのとれた普通の食生活が一番です。昆布などを極端に制限したり、逆に過剰に摂取したりする必要はありません。幼少期の不必要な放射線被曝を避けることが、唯一の予防策とされています。
Q12. 甲状腺がんは遺伝しますか?
最も多い乳頭がんや濾胞がんの大部分は遺伝しません。ただし「髄様がん」の約3分の1は遺伝性であるため、髄様がんと診断された場合はご家族の検査が強く推奨されます。
※この記事は医療情報の提供を目的としており、特定の治療法を推奨するものではありません。診断・治療については必ず医師にご相談ください。
