高血圧症
ホームタウンクリニック国分寺
当院は、総合内科、内分泌・代謝・糖尿病を専門とする院長が、患者さん一人ひとりの健康をサポートしています。
HbA1cなどの検査結果が即日分かる体制を整え、国分寺駅南口から徒歩3分という便利な立地で、平日は夜20時まで、土日も診療を行っております。お忙しい方も、ぜひご自身の健康管理にお役立てください。
はじめに
高血圧症は、医療機関で測定した血圧(診察室血圧)が収縮期血圧(上の血圧)140mmHg以上、または拡張期血圧(下の血圧)90mmHg以上、あるいはご自宅で測定した血圧(家庭血圧)が135/85mmHg以上の場合に診断されます。
この病気は、自覚症状がほとんどないまま進行することが多く、「サイレントキラー(静かな殺し屋)」という異名を持ちます。しかし、症状がないからといって放置するのは非常に危険です。高血圧は血管に常に高い圧力をかけ続けることで動脈硬化を促進し、心臓病、脳卒中、腎臓病といった命に関わる重大な病気の主要な危険因子となります。
高血圧の症状:なぜ「サイレントキラー」なのか?
高血圧の最も恐ろしい特徴は、初期段階ではほとんど自覚症状がないことです。そのため、健康診断などで偶然発見されるケースが少なくありません。しかし、血圧が著しく高い状態が続くと、以下のような症状が現れることがあります。
- 頭痛:特に後頭部に感じる重い痛みやズキズキする痛み
- めまい:ふらつきや立ちくらみ
- 肩こり:首筋から肩にかけての強い張り
- 動悸:心臓がドキドキと速く、または強く打つ感じ
- 息切れ:階段を上るなど、軽い運動でも息が苦しくなる
- むくみ:足や顔が腫れぼったくなる
- 鼻血:はっきりした原因なく鼻から出血する
これらの症状は高血圧に特有のものではなく、他の病気が原因である可能性もあります。いずれかの症状、特に複数が当てはまる場合は、自己判断せず、必ず医療機関を受診してください。
なぜ高血圧は危険なのか?―「動脈硬化」との深刻な関係
高血圧が危険とされる最大の理由は、全身の血管を傷つけ、動脈硬化を加速させることにあります。
私たちの血管は、本来しなやかで弾力性があります。しかし、常に高い圧力がかかり続けると、血管の内壁がダメージを受け、傷つきます。高血圧は、しなやかなホースの内側に絶えず高圧の水を流し続けるようなものです。やがてホースが傷つき、硬くなってしまうように、血管も弾力性を失っていきます。この傷ついた部分にコレステロールなどが溜まることで、血管は硬く、厚く、そして狭くなっていきます。これが動脈硬化です。
動脈硬化が進行すると、血流が悪くなったり、血栓(血の塊)が詰まったりして、以下のような命に関わる重大な病気を引き起こします。
- 冠動脈疾患:心臓に血液を送る冠動脈が狭くなったり詰まったりする病気で、心筋梗塞や狭心症を引き起こします。
- 脳卒中:脳の血管が詰まる脳梗塞や、破れる脳出血などがあり、麻痺や意識障害、最悪の場合は死に至ります。
- 腎臓病:腎臓の細い血管がダメージを受け、機能が低下します。進行すると腎不全となり、透析治療が必要になることもあります。
- 末梢動脈疾患:足の血管が狭くなり、歩行時に痛みを感じるなどの症状が現れます。
高血圧と糖尿病の関連性
糖尿病と高血圧は密接に関連しており、両者が合併することで動脈硬化性疾患の発症リスクや死亡リスクが相乗的に高まります。
糖尿病患者は非糖尿病患者に比べて冠動脈疾患による死亡リスクが約2.8倍高く、高血圧と合併することでリスクがさらに相乗的に高まります。また、内臓脂肪の蓄積に高血圧・脂質異常・高血糖が重なる「メタボリックシンドローム」は、動脈硬化性疾患の高リスク状態です。
糖尿病合併時の治療方針
- 早期の薬物療法開始:軽度高血圧(130-139/80-89 mmHg)の段階から推奨されます。
- 厳格な降圧目標:診察室血圧130/80 mmHg未満(家庭血圧125/75 mmHg未満)を目指します。
- 腎保護効果のある薬剤:尿にタンパクが出る場合、ACE阻害薬またはARBが第一選択です。
高血圧の原因と種類
主な原因
- 本態性高血圧:原因を一つに特定できず、遺伝的要因と生活習慣(塩分過多、肥満、運動不足など)が絡み合って発症します。患者さんの約90%を占めます。
- 二次性高血圧:特定の病気や薬剤などが原因となって引き起こされる高血圧です。比較的まれですが、原因を特定して治療することが重要です。
二次性高血圧を疑うべき場合
極端に若い年齢での発症、160/100 mmHg以上の高血圧、適切な治療でもコントロール困難な場合などは、詳しい検査が必要です。
二次性高血圧の主な原因
1. 病気による主な原因
- 腎臓疾患:急性および慢性腎臓病
- 原発性アルドステロン症:副腎から過剰にホルモンが分泌される病気
- 腎血管性高血圧:腎臓の血管が狭くなることで起こる高血圧
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群:睡眠中の呼吸障害が高血圧の原因となります
- 褐色細胞腫:副腎の腫瘍による発作性または持続性の高血圧
- クッシング症候群:副腎皮質ホルモンの過剰による高血圧
- 甲状腺疾患:甲状腺機能低下症・亢進症、副甲状腺機能亢進症など
2. 薬剤や物質による主な原因
処方薬や市販薬、サプリメントが血圧を上昇させることがあります。
- 経口避妊薬:特にエストロゲン用量が多いもの
- 副腎皮質ステロイド:炎症やアレルギーの治療に使用される薬
- 漢方薬に含まれるグリチルリチン(甘草):長期服用で血圧上昇の可能性
二次性高血圧の治療では、原因疾患の治療や原因薬剤の中止・変更が優先されます。現在服用中の薬やサプリメントがある方は、必ず医師にお伝えください。
正しい血圧測定方法
日本高血圧学会は、診察室での測定だけでなく、家庭血圧測定を強く推奨しています。血圧は測定する場所や状況によって変動するため、家庭での定期的な測定が診断や治療効果の判定に重要です。
血圧測定の種類
- 診察室血圧:医療機関で測定する血圧。
- 家庭血圧:自宅でリラックスして測定する血圧。診断や治療判定において優先されます。
- 白衣高血圧:診察室では緊張して高く出るが、家庭では正常な状態。
- 仮面高血圧:診察室では正常だが、家庭では高い状態。見逃されやすく、心血管疾患のリスクが高いため注意が必要です。
家庭での正しい測り方
血圧計の選び方
上腕式(腕にカフを巻くタイプ)を選んでください。手首式や指式は測定誤差が大きいため推奨されていません。
測定のタイミング
- 朝:起床後1時間以内、排尿後、朝食前、服薬前に測定。
- 晩:就寝直前に測定。
測定の手順
- 椅子に座り、1〜2分間安静にします。
- 原則として1機会に2回測定し、その平均値を記録します。
準備と姿勢
- 背もたれのある椅子に座り、足を組まずに床につけます。
- カフは素肌の腕に巻き、心臓の高さになるようにします。
- 測定中は会話を控えます。
2025年ガイドラインにおける血圧管理目標
2025年に改訂される「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」では、厳格な血圧管理の重要性が強調されています。
| 区分 | 診察室血圧 | 家庭血圧 |
|---|---|---|
| 診断基準 (高血圧と診断される値) |
140/90 mmHg以上 | 135/85 mmHg以上 |
| 降圧目標 (治療で目指す値) |
130/80 mmHg未満 | 125/75 mmHg未満 |
高血圧の治療:生活習慣の改善と薬物療法
生活習慣の改善
薬物療法と並行して、以下の生活習慣改善が必須です。
- 減塩:1日6g未満
- バランス食:野菜、果物、魚を積極的に
- 運動:ウォーキング毎日30分以上
- 禁煙:完全禁煙
- 節酒:1日純アルコール20g程度まで
- 減量:適正体重の維持
- ストレス軽減:十分な睡眠と休息
薬物療法
生活習慣の改善だけでは血圧が十分に下がらない場合、薬による治療を開始します。2025年のガイドラインでは、目標血圧(130/80 mmHg未満)を達成できない場合、できるだけ早期に薬の増量や追加を行う「積極的な治療方針」が示されています。
主要降圧薬(第一選択薬)
- Ca拮抗薬:血管を拡張。降圧効果が強く副作用が少ない。
- ARB/ACE阻害薬:血圧を上げるホルモンを抑制。心臓・腎臓の保護効果あり。
- サイアザイド系利尿薬:余分な水分・塩分を排出。体液貯留傾向のある方に有効。
- β遮断薬:心拍を抑制。頻脈傾向や心不全リスクのある方に有効。
追加降圧薬(第二選択以降)
主要降圧薬で効果不十分な場合に追加される薬剤です。
- ARNI:強力な降圧効果と心不全への効果
- MR拮抗薬:降圧と心臓・腎臓保護作用
- その他:治療抵抗性の場合、α遮断薬、ヒドララジンなども検討
病態に合わせた薬剤選択
- 糖尿病・腎臓病:ACE阻害薬またはARB
- 心不全:ACE阻害薬/ARB、β遮断薬、利尿薬の組み合わせ
- 妊娠中:特定の安全な薬剤のみ使用(ACE阻害薬・ARBは禁忌)
配合剤(シングルピル)の活用
複数の成分を1錠にまとめた配合剤は、飲み忘れを防ぎ効果的です。ARBとCa拮抗薬、ARBと利尿薬などの組み合わせが一般的です。
重要な注意事項
自己判断で薬を中断したり量を変更することは、血圧の急激な変動を招き大変危険です。薬に関する疑問や不安は、必ず主治医にご相談ください。
高血圧についてのよくある質問 (FAQ)
Q1: 高血圧症は遺伝しますか?
A1: はい、高血圧症の発症には遺伝的要因が関与しています。
血圧変動の約30%は遺伝的要因で、高血圧の親を持つ人は約2倍なりやすいとされています。ただし、遺伝だけで決まるわけではなく、生活習慣(塩分、肥満、運動不足など)が重なることで発症リスクが高まります。家族に高血圧の方がいる場合は、若い頃から定期的に血圧測定することをお勧めします。
Q2: 血圧は1日の中で変動しますか?
A2: はい、血圧は1日の中で常に変動しています。以下のような特徴があります。
昼間は高く睡眠中は低くなり、健康な方でも20〜30mmHg程度変動します。また、緊張、運動、食事などでも変動します。正確な血圧を知るには、朝(起床後、排尿後、食前、服薬前)と晩(就寝直前)の決まった時間に測定し、平均値を見ることが重要です。
Q3: 高血圧症と診断されたら、一生薬を飲み続けなければならないのですか?
A3: 多くの高血圧症患者にとって、降圧薬による治療は生涯にわたって必要となることが一般的です。しかし、必ずしも全員が一生飲み続けなければならないわけではなく、条件によっては減量や中止ができる場合もあります。
ただし、ご自身の判断で服薬を中止されると大変危険です。減薬をご希望の場合は、ぜひ主治医にご相談ください。生活習慣の改善とともに、最適な治療方針を一緒に考えていきましょう。
院長からのメッセージ
高血圧は自覚症状がないまま静かに進行し、命に関わる病気を引き起こす恐ろしい病気ですが、早期に発見し、適切に治療・管理すれば、健康な方と変わらない生活を送ることができます。
当院では、患者さん一人ひとりに寄り添い、丁寧な診察と分かりやすい説明を心がけています。迅速な検査体制で診断から治療方針の決定までスムーズに行い、お忙しい方でも通院しやすい環境を整えています。
健康診断で血圧が高いと指摘された方、ご自身の血圧に不安を感じている方は、どうぞためらわずにご相談ください。
一緒に高血圧を克服し、健康な未来を築きましょう。
