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手術を受ける糖尿病の方へ

[2026.04.01]

手術前後の血糖管理について知っておきたいこと

糖尿病のある方が手術を受けるとき、血糖コントロールが治療の経過に影響することがあります。手術前の準備から手術中・手術後の管理まで、どのような点に気をつければよいかをわかりやすくご説明します。

1. 糖尿病と手術:なぜ血糖管理が大切なのか

糖尿病の方は、感染症への抵抗力が低下しやすい状態にあることが知られています。血糖値が高い状態では、白血球(免疫を担う細胞)の遊走能・接着能・貪食能・殺菌能が低下し、末梢の循環障害や神経障害なども関係することから、手術後の感染症(手術部位の感染や肺炎など)のリスクが高くなりやすい傾向があると複数の研究で報告されています。

特に、血糖値が250mg/dLを超えると感染がより急速に悪化しやすくなると考えられています。また、術後に縫合部の回復が遅れるリスクや、腎臓・心臓などへの影響が出やすくなることも指摘されています。手術後の感染症・心臓や腎臓への合併症を防ぐためにも、手術の前から後にかけて血糖コントロールをできるだけ良好に保つことが大切とされています。

2. 手術前に確認しておきたいこと

手術前には、担当医や糖尿病専門医が血糖コントロールの状態を確認します。目安として、食前の血糖値が140mg/dL未満、随時血糖値が180mg/dL未満であることが一つの指標とされることがあります。空腹時血糖値が200mg/dL以上、食後血糖値が300mg/dL以上、あるいは尿ケトン体が陽性の場合には、手術の延期が検討されることがあります。

手術前のHbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均を反映する検査値)の目標については、現時点でも学会によって見解に差があり、一つの明確な基準が定まっているわけではありません。血糖コントロールが著しく不良な場合には、手術の時期を改めて検討することがあります。また、血糖コントロールの改善のために手術前から入院して管理を行う場合もあります。

服用・使用している糖尿病の薬については、種類によって手術前後の対応が異なります。経口の血糖降下薬の多くは、手術前に一時的に中止することが基本とされています。特に次の点は事前に担当医にご確認ください。

  • SGLT2阻害薬(尿から糖を排出する作用の薬):手術前3日前からの中止が推奨されています。手術前の絶食状態などを契機にケトアシドーシス(血液が酸性になる状態)を起こすリスクがあるためです。
  • SU薬(スルホニル尿素薬)・グリニド薬:低血糖のリスクがあるため、手術当日は休薬とすることが多いですが、SU薬の場合には中止後に血糖推移が悪化する可能性もあり、事前にインスリンに置き換える施設もあります。
  • GLP-1受容体作動薬(注射薬を含む):胃の内容物の排出を遅らせる作用があり、麻酔中の誤嚥リスクに関わる可能性があります。手術前の対応は週1回投与か毎日投与かによっても異なりますので、担当医にご相談ください。
  • メトホルミン(ビグアナイド薬):手術2日前からの中止が必要とされています。腎機能が低下しやすい手術前後に乳酸アシドーシスを起こすリスクがあるためです。

薬の調整は自己判断せず、必ず担当医の指示に従ってください。

3. 手術当日〜手術中の血糖管理

手術中は、手術による体へのストレスに反応してカテコラミン・グルカゴン・コルチゾール・成長ホルモンなどが分泌され、これらは抗インスリン作用をもつため、血糖値が上昇しやすい状態になります。糖尿病のない方でも、手術中に血糖値が高くなることがあるとされています。
術中の高血糖は術後の感染症・縫合不全・臓器障害などのリスクと関連するとされており、手術中も適切な血糖管理が行われます。一方、血糖値を下げすぎる(低血糖)ことにもリスクがあることがわかっており、高血糖・低血糖の両方を避けながら一定の範囲内に保つことが目指されます。麻酔科医や担当医が状態に合わせて輸液・インスリン投与を調整します。

4. 手術後の血糖管理と回復

手術後も、高血糖・低血糖の両方を避けながら、血糖値を一定の範囲内に保つことが大切です。術後急性期の血糖管理目標については、随時血糖値を140〜180mg/dL程度にコントロールすることを目指すとする考え方が参考にされていますが、患者さんの状態や手術内容によって対応は異なります。極端に血糖を下げすぎることは重症低血糖のリスクを高めるため、推奨されていません。

インスリン投与が必要だった方は、手術後もインスリン投与による慎重な血糖コントロールが続けられます。食事が再開できるようになったら、経口薬への切り替えや調整が行われるのが一般的です。術後の血糖コントロールは、麻酔科医・外科医・糖尿病専門医などが連携して管理します。疑問や不安があれば、遠慮なく医療チームにお伝えください。

5. 受診・相談の目安

糖尿病の方が手術を予定している場合には、事前に担当医や糖尿病専門医への相談をおすすめします。特に以下のような状況では、早めにご相談ください。

  • 現在、血糖コントロールがうまくいっていないと感じる場合
  • 服用中の糖尿病の薬の手術前後の対応について不明な点がある場合
  • 手術前後に体のだるさ・口の渇き・尿の量の変化など体調変化が気になる場合
  • 手術について、血糖コントロールの観点からあらかじめ準備しておきたい場合

6. まとめ

  • 糖尿病のある方は手術前後の感染症・合併症リスクが高くなりやすい傾向があり、血糖コントロールが大切です。
  • 手術前には血糖値・HbA1c・服薬状況の確認が行われ、必要に応じて薬の調整が行われます。
  • SGLT2阻害薬・SU薬・GLP-1受容体作動薬・メトホルミンなどは、手術前の対応が必要な場合があります。自己判断せず担当医にご相談ください。
  • 手術中・手術後も、高血糖と低血糖の両方を避ける血糖管理が続きます。随時血糖値の目安としては140〜180mg/dL程度を目指す考え方が参考にされています。
  • 疑問や不安は、担当医や糖尿病専門医にご相談ください。

糖尿病をお持ちの方で手術を控えている場合や、血糖コントロールについてご不安がある方は、早めに医療機関へご相談ください。当院では、糖尿病や生活習慣病についてのご相談を受け付けています。受診をご希望の方は、ホームページの予約案内もご確認ください。

免責・注意書き

この記事は、一般的な医療情報の提供を目的として作成しています。記載している内容は、症状や病気について理解を深めるための参考情報であり、個別の診断や治療方針を示すものではありません。
実際の症状、検査結果、治療の必要性や治療内容は、年齢、体質、持病、服薬状況などによって異なります。気になる症状がある場合や、健診結果について不安がある場合は、自己判断せず、医療機関にご相談ください。
当記事は、作成時点で参照した資料にもとづいて作成していますが、医療情報は今後更新されることがあります。最新の情報やご自身に適した対応については、医師の診察のもとでご確認ください。

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