血糖の“見える化”とは?
高齢者の糖尿病とは?
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の検査だけでは、1日の血糖の動きはなかなかつかめません。近年注目を集めているCGM(持続血糖測定)は、血糖の“流れ”を継続的に記録できる機器です。この記事では、CGMとはどのようなもので、どのような場合に活用が考えられるのかをご説明します。
1. まず知っておきたいこと:CGMとは何か
持続血糖測定(Continuous Glucose Monitoring:CGM)とは、皮膚の下に留置したセンサーにより、間質液中のグルコース濃度を継続的に測定する機器です。血糖の値が自動で記録され、1日を通じた“血糖の流れ”を把握することができます。
これまでの血糖自己測定(SMBG)では、指先から採血して特定の時点の血糖値を調べる方法が主流でした。1日のうちの“点”の情報しか得られないため、夜間や食後の変動を見落としてしまうことがありました。CGMはこの課題を補い、血糖の全体的な動きを継続的に把握できる機器として、近年、糖尿病診療で広く使われるようになっています。
CGMには大きく2種類あります。
- リアルタイムCGM(rtCGM):センサーのデータがスマートフォンや専用機器にリアルタイムで表示されるタイプです。
- 間歇スキャン式CGM(isCGM):スマートフォンや専用の読み取り機をセンサーにかざすことでデータを確認できるタイプです。FreeStyleリブレ2が国内で広く使われている機器の一例です。
2. HbA1cだけではわからないこと
糖尿病の管理で広く使われるHbA1cは、数か月分の血糖の平均値を示す指標です。長期的な血糖のコントロール状態を評価するうえで重要ですが、日々の血糖の変動や夜間に起きる低血糖などを直接とらえることは難しいとされています。
たとえば、HbA1cが同じ値であっても、血糖の変動の幅や低血糖の頻度は人によって大きく異なる場合があります。HbA1cの値だけを見ていると、日常の血糖管理に改善が必要な状況を見落としてしまうこともあります。CGMを使うことで、食事や運動が血糖に与える影響をより細かく把握でき、患者さん自身が血糖管理への気づきを得るきっかけにもなるとされています。
3. CGMで何がわかるか:TIRという新しい指標
CGMのデータを活用する際に注目されている指標のひとつが、TIR(Time in Range:目標範囲内時間)です。TIRとは、血糖値が目標範囲(70〜180 mg/dL)に収まっていた時間の割合を示すものです。
2024年に日本糖尿病学会が発表したコンセンサスステートメントでは、一般的な1型・2型糖尿病の方を対象とした目安として、以下が示されています。
- TIR(目標範囲内時間):70%以上を目指す
- TBR(低血糖域の時間割合:血糖値70 mg/dL未満):4%未満に抑える
- TAR(高血糖域の時間割合:血糖値180 mg/dL超):25%未満に抑える
また、CGMのデータはAGPレポート(Ambulatory Glucose Profile)としてグラフ化でき、1日の血糖の流れや日によるばらつきを視覚的に把握することができます。GMI(Glucose Management Indicator)は、CGMの平均グルコース値から推定されるHbA1cに近い指標で、直近の血糖コントロール状態の確認に活用されています。
4. こんな方に活用が考えられます
CGMは、以下のような状況で特に活用が検討されることがあります
インスリン治療を行っている1型糖尿病の方
インスリンポンプとCGMを組み合わせた治療(AID療法)により、血糖コントロール指標の改善が報告されています。HCL(ハイブリッドクローズドループ)やAHCL(アドバンスハイブリッドクローズドループ)と組み合わせることで、より安定した血糖管理が期待できるとされています。
2型糖尿病で血糖管理が気になる方
日本人の2型糖尿病患者を対象とした多施設共同研究では、TIRとHbA1cとの間に一定の関連があることが示されています。CGMとHbA1cを組み合わせることで、血糖管理の状態をより詳しく評価できると考えられています。
高齢の糖尿病患者の方
高齢者では低血糖が起きても自覚症状が出にくくなることがあり、重症低血糖のリスクが高まりやすいとされています。CGMを活用することで、血糖の変動をより早期に把握できる場合があります。
妊娠中の血糖管理が必要な方
妊娠糖尿病や糖尿病合併妊娠の方では、良好な血糖管理が母子ともに重要とされており、isCGMの活用も検討されています。妊娠中の目標血糖範囲は一般の方と異なるため、担当医との相談が大切です。
5. 受診や相談を考える目安
以下のようなことが気になる場合は、医療機関にご相談されることをお勧めします。
- 健診でHbA1cや血糖値を指摘されたが、日々の血糖の動きが気になる方
- 糖尿病の治療中で、低血糖が心配な方
- インスリン治療を受けているが、さらなる血糖管理の改善を希望する方
- CGMの保険適用についてくわしく知りたい方
6. まとめ
- CGM(持続血糖測定)は、血糖の“点”ではなく“流れ”を継続的に記録できる機器です。
- HbA1cだけでは見えにくい日々の血糖変動や低血糖のリスクを把握する手助けになります。
- TIRをはじめとする指標を活用することで、血糖管理の質をより詳しく評価できるとされています。
- 1型・2型糖尿病の方、高齢の方、妊娠中の方など、さまざまな状況での活用が検討されています。
- 気になる点がある場合は、かかりつけの医療機関にご相談ください。
リブレ2やG7ともに採用している当院でも、糖尿病や血糖管理についてのご相談を受け付けています。受診をご希望の方は、ホームページの予約案内もご確認ください。
免責・注意書き
この記事は、一般的な医療情報の提供を目的として作成しています。記載している内容は、症状や病気について理解を深めるための参考情報であり、個別の診断や治療方針を示すものではありません。
実際の症状、検査結果、治療の必要性や治療内容は、年齢、体質、持病、服薬状況などによって異なります。気になる症状がある場合や、健診結果について不安がある場合は、自己判断せず、医療機関にご相談ください。
当記事は、作成時点で参照した資料にもとづいて作成していますが、医療情報は今後更新されることがあります。最新の情報やご自身に適した対応については、医師の診察のもとでご確認ください。
